種子用ニンニクとは?青果用との違いと正しい選び方を解説

ニンニク栽培では、普段私たちが食べているニンニクそのものを「種子」として植え付けます。
では、種子用として販売されているニンニクと、スーパーなどで販売されている青果用ニンニクには、どのような違いがあるのでしょうか。
実は見た目だけでは、ほとんど区別がつきません。
今回は、ニンニク種子の特徴や寿命、青果用ニンニクが種子に適さない理由、そして種子選びで大切な「温度管理」について、順番に解説していきます
そもそも「種子用ニンニク」とは?
ニンニクは、球を一片ずつに分けた「鱗片(りんぺん)」を植えると、そこから芽が出て成長します。専門的には「栄養生殖型」に分類され、種を介さず、植物の一部から自分自身を増殖させていきます。
鱗片とは、ニンニクをバラバラにしたときの一片一片のことで、「子球(子ニンニク)」と表現されることもあります。
同じように栄養生殖で増える野菜には、ジャガイモやサツマイモがあります。地下茎ではありませんが、ランナーによって増えるイチゴも同じ分類です。簡単にいえば、「種を介さずに増える無性生殖の一種」です。
つまりニンニクの場合、私たちが普段食べている部分そのものが、次のニンニクを育てるための「種子」になります。
野菜の種子はどのくらい保存できる?
ニンニクの話に入る前に、一般的な野菜の種子について見てみましょう。
多くの野菜の種子は、長期間保存する場合、湿気を避けて冷暗所で管理します。未開封の状態であれば、5〜10℃程度の冷蔵設備で保管されるのが一般的です。
当年中に使い切る場合は、常温で保管することもあります。
種子の寿命は野菜によって異なり、
トウモロコシ・カボチャ・キュウリなど……5〜10年程度
レタス・キャベツなど……5年程度
ネギ・タマネギなど……2年程度
とされています。
特にニンニクと同じ仲間に近いネギやタマネギは、比較的種子の寿命が短いため、生産者はできるだけ早く使い切るようにしています。
プロ農家にとって発芽率の低下は収入減に直結します。
また、新品種が発売されることもありますし、使わない種子を長期間保管することは、その分お金が寝てしまうことにもなります。そのため、基本的には新しい種子から使っていきます。
少し話はそれますが、お米の場合、農研機構の研究等によれば種子として17.5年の寿命があるとされています。ただし、実際の運用では2年程度までとされています。
また、キャベツなどでは、プロ農家から「数年間冷蔵庫で保管した種子の方が安定する」という話を聞くこともあります。キャベツ農家ならではの裏技なのかもしれません。
ニンニクは長持ちするのに、なぜ種子としての寿命は短い?
ニンニクは比較的保存性の高い野菜です。糖度は30〜40%と高く、そのことも腐りにくさに関係しています。
例えば、保存性の高い食品として知られるジャムも糖度が高く、一般的なジャムでは65%以上あります。高い糖度による浸透圧の働きで、雑菌が繁殖しにくくなります。
ニンニクも適切な冷蔵保存やCA貯蔵を行うことで、青果として長期間保存できます。
中国では冷蔵技術の進歩や電気代の安さもあり、2年程度冷蔵保存されることもあるようです。そのことから投機対象にもなり、近年のニンニク市況の高止まりを助長する一因となっています。
ここまで読むと、ひとつ疑問が出てきます。
糖度が高く、腐りにくく、冷蔵すれば長持ちする。それなのに、なぜ「種子」としての寿命は短いのでしょうか?
「食べられる期間」と「種子として使える期間」は違う
その理由として考えられるのが、水分量です。
一般的な野菜の種子の水分量が3〜7%程度なのに対し、ニンニクは13〜15%程度あります。糖度は高いものの、長期間「種子」として保存するには水分量が多いのです。
例えば、同じイカでも、しっかり乾燥させたスルメイカは長持ちしますが、水分の多い一夜干しはそれほど長く保存できません。
ニンニクにも、これと似た考え方が当てはまります。
ニンニクの種子としての寿命については推測を含みますが、単純に「発芽するかどうか」だけで考えれば、冷蔵保存で2〜3年程度と考えられます。
しかし、「栽培に適した種子」として考えると1年以下、正確にはさらに短いと考えています。
5〜6月頃に収穫したニンニクを、その年の秋に植え付ける。これが種子として最も適した使い方だからです。
青果用ニンニクを植えるとどうなる?
「植えたのに芽が出てこない」
「発芽する時期にバラつきがある」
「二次成長が多く発生した」
こうしたケースでは、青果用として管理されたニンニクを種子に使ったことが影響している可能性があります。
難しいのは、種子用ニンニクと青果用ニンニクは、外見だけでは区別がつかないことです。
スーパーなどで販売されているニンニクでも、植えればそのまま収穫できる場合はあります。一方で、うまく育たなかったり、全滅したりするリスクもあります。
また、種子用として販売されていても、実際には青果用と同じような管理をされたニンニクが使われているケースも見られます。
では、なぜ青果用として保存されたニンニクは、種子として使う場合に注意が必要なのでしょうか。
そのポイントになるのが、「温度」です。
ニンニクの成長には2つの「スイッチ」がある
ニンニクが正常に育つためには、「鱗片分化」と「花芽分化」という2つの重要な過程があります。
鱗片分化とは?
鱗片分化とは、ニンニクの球が一片一片に分かれて形成されていく過程です。
系統や栽培地域によって違いがあるため一概にはいえませんが、定植後の積算温度などによって時期が決まるともいわれています。
つまり、温度の積み重ねがスイッチのひとつになります。
花芽分化とは?
花芽分化には低温が大きく関係します。
ニンニクが一定期間低温にさらされることで、その後の花芽形成が促されます。このように低温によって植物の生育段階が進む現象を「バーナリゼーション(春化)」と呼びます。
こちらは、低温がスイッチになります。
この2つのスイッチが意図しないタイミングで入ってしまうと、正常なニンニクとして育ちにくくなる場合があります。
スポンジ球や二次成長につながることも
温度などの影響によって生育のスイッチが正常に働かないと、「スポンジ球」や「二次成長」といった生理障害を引き起こすことがあります。
スポンジ球は「不結球葉状化」とも呼ばれ、ニンニクが正常に鱗片へ分かれず、タマネギのような形になってしまう現象です。
二次成長が起こると、正常な球が形成されにくくなり、商品価値にも影響します。
特に青果用として長期間保存されたニンニクを種子として使用すると、二次成長が現れやすくなることがあります。
だからこそ、種子用ニンニクでは、収穫後の温度管理や乾燥方法が重要になります。
青果用と種子用では「温度管理」の目的が違う
青果用ニンニクでは、収穫後に加熱して高温で乾燥させ、低温で保存し、検品や箱詰め作業では再び常温環境に出すことがあります。
つまり、
高温 → 低温 → 常温
と、ジェットコースターのように経験する温度帯が変化します。
青果として品質を維持するためには必要な管理でも、種子として考えた場合、この温度変化によって鱗片分化や花芽分化の「スイッチ」が意図しない形で入ってしまうリスクがあります。
そのため、食べるために適した保存方法と、植えるために適した保存方法は同じではありません。
種子用ニンニクを選ぶときは、見た目だけではなく、収穫後にどのような温度管理が行われてきたかも大切なポイントになります。
菜園おおのはらの種子用ニンニク
菜園おおのはらでは、収穫してから皆さまのお手元に届くまで、種子としての品質を考えた温度管理を行っています。
地域を村レベルまで限定し、さらに生産者単位で仕入れることで、青果としての長期保存以上に種子として適した温度管理を優先しています。
目指しているのは、発芽率が高く、スポンジ球や二次成長などの生理障害が発生しにくい種子用ニンニクをお届けすることです。
ニンニクは見た目だけでは、種子用と青果用の違いを判断することができません。
だからこそ菜園おおのはらでは、「どんなニンニクか」だけではなく、「収穫後にどのように管理されてきたか」まで含めて、種子の品質だと考えています。
種子用ニンニクが届いたら、どう保管する?
ご購入いただいた種子用ニンニクが届いたら、植え付けまでは風通しがよく、雨や直射日光の当たらない場所で保管してください。
納屋などで保管する場合も、締め切って高温になる場所は避けましょう。
また、家庭用冷蔵庫には入れないでください。
時間がある方や保管状態が心配な方は、届いた状態のままにせず、通気性のよいキャリーやコンテナなどに移し替えていただくと、より安心です。
種子用ニンニクは、植え付けるまでの管理も大切です。
その年に収穫した種子を、その年の秋に植える。そして、植え付けるその日まで適切な環境で保管する。
良いニンニクづくりは、畑に植える前から始まっています。
ここまで見てきたように、ニンニクはどのような環境で管理されてきたかによって、その後の発芽や生育に影響が出ることがあります。
見た目だけでは種子用と青果用の違いを判断することは難しいため、価格や大きさだけでなく、収穫後の管理方法まで確認して、栽培に適した種子を選ぶことが大切です。
今回ご紹介した内容を参考に、ぜひニンニクの種子選びに役立ててください。

